ピーター・ドラッカーの名言「If you can't measure it, you can't improve it.(測定できないものは改善できない)」は、経営や管理の世界でよく引用されます。特に、現代のビジネスではデータの視覚化や測定は、業務改善や効率化を進めるための重要な手法となっています。私自身の経験を通じて、見える化の重要性を改めて実感した例を紹介します。
見えないものを「見える化」する技術:ダイソン掃除機の例
日常生活の中でも「見える化」はよく見られます。例えば、ダイソン掃除機のグリーンLEDが目に見えないホコリを照らし出す仕組みです。この技術は、ホコリがどこにあるかを視覚的に教えてくれるため、掃除の効果を実感できるようになっています。目に見えないものが見えるようになると、次に取るべき行動が明確になり、結果として改善が可能になります。この体験は、業務プロセスやデータ管理における「見える化」と本質的に同じです。
内部統制の「見える化」と業務改善
私が関わってきた内部統制監査においても、見える化の力は絶大です。監査を実施する際には、3点セットと言われる「業務記述書」、「フローチャート」、そして「リスクコントロールマトリックス」を作成します。これらのドキュメントは、業務のオペレーションを文書化し、フローとして可視化し、リスクとその対応策を明確にするものです。
このプロセスは、ただの書類作りではありません。業務を見える化し体系化することで、実際のオペレーションが理解しやすくなり、どこに改善の余地があるのかを明確に把握することができます。視覚的に業務の流れやリスクのポイントが明らかになると、それまで見落としていた課題や非効率が浮き彫りになり、次にどのような改善を行うべきかがわかるのです。
データの「見える化」:会計における元データの管理
経営管理や会計の世界でも、測定可能なデータの重要性は言うまでもありません。しかし、単なる仕訳情報では意味がない場合が多く、関連する仕訳を集めてその関係性を明確にしなければ、全体像が見えてこないことがあります。
例えば、会計において仕訳情報は元となるデータ(ソースデータ)から抽象化されたものです。しかし、この元データと仕訳との関係性を理解し、適切にシステムで制御することで、仕訳情報をただの数値ではなく、価値ある情報として活用することができるようになります。元データが見えない、あるいは適切に管理されていない場合、その後の分析や改善が行き詰まることがあります。
まとめ
「測定できないものは改善できない」というドラッカーの言葉は、単に数値を集めることではなく、その背後にあるプロセスやデータの関係性を明確にし、可視化することで初めて、改善の余地を見出せるという意味を持っています。日常生活のダイソン掃除機の例から、企業内の内部統制や会計管理まで、見える化は私たちに重要なインサイトを提供してくれる手法です。データや業務を可視化することで、ビジネスはより明確な戦略を持って成長していけるのです。
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