今回は「役員の給与の損金性について」というテーマでお話しします。
初めての方もいらっしゃるかと思いますので、まず「役員給与」と「損金性」について簡単にご説明したいと思います。
役員給与について
役員賞与とは、役員に対して支給される賞与で、役員報酬の一つとされています。例として、取締役などの会社役員に対して臨時的に支給されるものがあり、毎月支給される役員報酬とは区別して使われることが多いです。
また、役員賞与は損金に参入することもできます。例えば、役員報酬の支払いを行う余力がなかった会社でも、業績が回復すれば臨時報酬の約束をすることで、役員たちがより積極的に仕事に取り組めるでしょう。業績回復後に臨時の役員賞与が支給されることで、さらに業績アップのために役員がモチベーション高く行動することが期待されます。
役員賞与という成功報酬を設けることで、役員のモチベーションを向上させることが可能です。ただし、役員賞与の支給には条件があり、経営側の自由な裁量で支給して損金に参入できるわけではありません。税務上の留意を怠ると、役員賞与が損金不参入となる可能性があるため、注意が必要です。
損金性について
損金という言葉だけを見ると、単なる出費というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、特に法人にとっては節税効果を高めるために非常に重要な項目となります。少しでも法人税額を節税するためには、損金をどれだけ正確に計上できるかが鍵となります。
損金は大きく分けて「原価」「費用」「損失」の3つに分類されます。損金とは、費用や損失として「会社から外へと出ていくもの」で、年度単位で計算されます。出ていくものなら何でも損金扱いにすると、不当な節税行為とみなされるため、損金として算入できないものに関するルールが定められています。
原価
原価とは商品の原価のことです。年度内の商品原価を計算し、その事業年度の原価として計上します。原価を損金として計上するということは、商品の売上も同時に益金として計上されることになります。
費用
事業活動にかかる費用は、少額でも費用に分類し、原価と同じく損金計上します。しかし、正当な目的以外の費用まで損金として算入されることを防ぐため、費用にはいくつかの制限やルールがあります。
損失
損失とは、固定資産価値の減少や不良債権など、会社の資産価値の減少を表します。原価と費用については計上の決まりがありますが、損失については計上のタイミングに関する決まりはありません。
損金として算入できない項目や制限される項目について
損金として算入できないものや算入が制限されるものは、「経営者の判断でコントロールできる費用や損失」に共通しています。
役員への給与: 社長や取締役などの役員に対する給与は、損金に算入できません。ただし、一般従業員と同様に毎月一定額の給与を受け取っている場合は、損金として算入できます。
親族経営の会社との取引: 親族経営の会社間で不当な取引が行われた場合、その取引は認められず、損金にも算入できません。
寄付金: 寄付金は原則として損金に算入できませんが、条件を満たせば一部損金とすることができます。
接待交際費: 接待交際費は条件を満たせば、一人5,000円までの飲食費や、5,000円を超える飲食費の50%を損金として計上できます。資本金1億円以下の会社には特例があります。
資産評価額: 資産価値の評価額が減少した場合でも、原則として損金に算入できませんが、災害による減少など一部例外があります。
貸倒損失: 不良債権は、厳格な条件をクリアすることで損金に算入できます。
分割で損金が算入されるもの
損金は「発生主義」で処理されるため、分割で算入されるものもあります。
繰延資産: 開業費用や開発費用など、複数年にわたって収益をもたらすものは、繰延資産として複数年にわたって損金に計上されます。
減価償却費: パソコンや自動車などの減価償却資産は年々価値が減少するため、その減少分を複数年にわたって損金として計上します。
いかがでしたでしょうか?
損金については、法人の節税には欠かせない知識です。計上間違いや計上漏れがないよう、正しい知識をしっかりと身につけましょう。
今回は「役員の給与の損金性について」でした。
Comments