経理処理は、計算やデータ入力、帳簿の整備といった具体的な作業が中心で、一見すると複雑ではありません。それなのに、「やりたくない」と感じたり、後回しにしてしまう人は多いのではないでしょうか。実は、この現象には私たちの脳の仕組みが関係しているのです。
経理処理が「やりたくない」と思われる理由
脳科学の観点から、経理処理が面倒に感じる理由を3つ挙げてみます。
1. 報酬系の欠如:すぐには成果が見えない
脳は、何かを成し遂げたときに「達成感」や「喜び」を感じるようにできています。これを司るのが「報酬系」という仕組みです。しかし、経理処理は以下のような特徴を持ち、脳の報酬系を刺激しにくい作業です。
成果が目に見えにくい(入力してもその場で感動は得られない)
楽しさや興奮がない(数字や帳簿が相手)
反復的な作業が多い(飽きる)
このような特性が、脳に「退屈」や「不快」を感じさせ、「やりたくない」という感情を引き起こします。
2. 認知的負荷:複数のことを同時に処理する難しさ
経理処理では、数字の確認、入力、計算、場合によっては帳簿の分類など、多くのステップを同時に行う必要があります。脳にとっては、これらの作業を並列で処理することは負荷が高い行為です。特に、慣れていない場合、以下のような現象が起きやすくなります。
短期記憶の限界:一度に覚えておける情報量は7±2個と言われていますが、経理作業ではこれを超える場合も多い。
エラーへの恐怖:ミスをしてはいけないというプレッシャーが脳を萎縮させ、作業をさらに困難にします。
3. 感情の回避:退屈や不快感の回避行動
人間の脳は、本能的に不快なものを避けようとします。退屈やストレスもその一種です。経理処理は「退屈で単調」と思われがちで、そのイメージが作業に対する強い心理的ブロックを作り上げます。
経理処理は何に例えられるか?
経理処理の「やりたくない感覚」は、例えば以下のようなものに例えられるかもしれません。
運動不足の人がランニングを始めることランニングそのものは難しい行為ではありませんが、最初は体が重く、心が乗らず、なかなか始められません。慣れればスムーズにできるようになりますが、それまでは強い意志が必要です。
苦手科目の勉強重要だと頭では分かっていても、やりたくない。自分の得意分野でなかったり、理解に時間がかかると、さらに億劫になります。
「やりたくない」を乗り越える方法:脳の仕組みを利用する
この感情を克服するためには、脳の仕組みを逆に利用することが有効です。
小さな報酬を用意する「10分だけやったら好きなお菓子を食べる」など、自分に小さなご褒美を用意することで、脳の報酬系を活性化できます。
作業を分割する「すべてを一度に終わらせる」と考えず、作業を細分化して一つずつ達成感を得る方法です。「今日は売上計上だけ」「明日は支出の整理だけ」といった具合に分けてみましょう。
ルーティン化する脳は、繰り返し行われる作業を「自動化」する性質を持っています。決まった時間に経理処理をする習慣を作ることで、徐々に「特別な作業」と感じなくなります。
見える化する進捗や結果を視覚的に示すことで脳が報酬を感じやすくなります。例えば、「処理したデータ量」や「終わった帳簿の山」をグラフやリストで可視化してみるのも良いでしょう。
経理処理は「慣れ」の問題なのか?
結論として、経理処理が「やりたくない」と感じるのは、単なる慣れの問題ではなく、脳が感じる負担や報酬不足が大きな原因です。しかし、その負担を減らす工夫をすれば、必ず乗り越えられるものです。経理処理そのものは難しくありませんが、それに向き合う心の壁を克服することが、最初の一歩と言えるでしょう。
脳の仕組みを理解し、自分に合った方法で経理処理を「やりたくなる作業」に変えてみませんか?
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