
2025年(令和7年)4月に施行される雇用保険法の改正は、多くの被保険者や企業に影響を及ぼします。自己都合退職者への給付制限期間の短縮や新たな給付制度の創設など、大きな変更が予定されています。本記事では、改正ポイントをわかりやすく解説します。
目次
1. 自己都合退職者の給付制限短縮
(1)概要
給付制限期間の短縮により、離職後早期に失業給付を受けられるようになります。
教育訓練を受けた場合は、より柔軟に給付を受けられる仕組みが整備されます。
(2)現行
自己都合離職者に対しては、失業給付(基本手当)の受給に当たって、待期満了の翌日から原則2ヶ月間の給付制限期間がある。
※5年以内に2回を超える場合は3ヶ月
ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合、給付制限が解除される。
(3)改正後
原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮する
※5年以内に2回を超える場合は3ヶ月
離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限が解除される
※教育訓練給付制度の支給対象となる教育訓練に限る
2. 就業促進手当の見直し
(1)概要
再就職支援の在り方を見直し、就業支援の形が変更されます。
就業促進定着手当の支給率引下げにより、企業と従業員の双方における再就職支援の活用法が変わる可能性があります。
(2)現行
就業手当:安定した職業以外の職業に早期再就職した場合の手当。
就業促進定着手当:早期再就職し、離職前の賃金から再就職後賃金が低下していた場合に低下した賃金の6か月分を支給する手当。
※基本手当支給残日数の40%相当額(再就職手当が支給された場合は30%相当額)が上限
(3)改正後
就業手当:廃止。
就業促進定着手当:上限を現行の40%(または30%)から20%に引き下げ。
3. 教育訓練支援給付金の給付率引下げ
(1)概要
教育訓練支援給付金(45才未満の者に基本手当の80%を訓練受講中に支給)は、令和6年度末までの暫定措置とされていました。
(2)現行
初めて専門実践教育訓練を受講し、修了する見込みのある45才未満の離職者に対して、訓練期間中の受講支援として、基本手当日額の80%を訓練受講中に2か月ごとに支給。
(3)改正後
初めて専門実践教育訓練を受講し、修了する見込みのある45才未満の離職者に対して、訓練期間中の受講支援として、基本手当日額の60%を訓練受講中に2か月ごとに支給。
2年間延長し、令和8年度末まで継続。
4. 出生後休業支援給付の創設
(1)概要
夫婦ともに働き育児を行う「共働き・共育て」を推進するため、特に男性の育児休業取得の促進が求められているが、経済的な理由で夫婦そろっての育児休業を取得することをためらうケースが多い現状です。そこで、育児休業給付金と合わせて、実質的な給付率が80%(手取りで10割相当)へ引き上げることで、出生後早期に育児参加を促進する主旨です。
(2)現行
育児休業を取得した場合、休業開始から通算180日までは賃金の67%(手取りで8割相当)、180日経過後は50%が支給。
(3)改正後
子の出生直後の一定期間(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げる。
※配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率を引き上げる。
5. 育児時短就業給付の創設
(1)概要
短時間勤務を選択する育児世帯を支援し、働きながら子育てしやすい環境を整備するための制度。
現状、育児のために短時間勤務制度を選択した場合に、賃金が低下した労働者に対して給付する制度がなく、「共働き・共育て」の推進や、労働者の育児とキャリア形成の両立支援を目的として創設される。
(2)現行
なし
(3)改正後
被保険者が2歳未満の子の養育のために短時間勤務した場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を給付。
※休業よりも時短勤務を、時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進
6. まとめと相談窓口
令和7年4月の雇用保険法改正では、失業給付や育児休業関連の制度に大きな変更が加えられます。自己都合退職者への支援強化、育児と働き方の両立支援など、多岐にわたる改正が予定されています。早めに変更点を確認し、スムーズな対応を心がけましょう。
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