
出産や育児に関する公的な支援制度は、安心して子育てを始めるための重要な仕組みです。しかし、個々のケースによって受けられる給付や手続きが異なるため、正確な理解が必要です。本記事では、ケース別に利用できる制度や給付内容を解説し、必要な手続きについても詳しくお伝えします。
目次
(1) 出産育児一時金
(2) 出産手当金
(1) 育児休業給付金
(2) 出産後に育児休業を取得する際の注意点
(1) 健康保険関連の申請
(2) 雇用保険関連の申請
ケース1:産休をフル活用し、1歳6か月で育休終了
ケース2:育休を分割取得、配偶者も育休を取得
ケース3:1歳6か月時点で保育園等に入所できず、2歳まで育休を延長
(1)改正ポイント
(2)具体的な手続き
(3)注意点
1.健康保険における出産・育児関連の制度
※協会けんぽの場合
(1) 出産育児一時金
出産にかかる経済的負担を軽減するために支給される一時金。1児につき42万円(産科医療補償制度対象外の施設は40.8万円)が支給されます。
(2) 出産手当金
産休中の所得補償として支給されます。支給額は1日あたりの標準報酬日額【※】×2/3で、産前42日間+産後56日間が対象です。出産が予定より早い場合や遅れた場合は、その日数に応じて期間が変動します。
※支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日
公式サイト:
2.雇用保険における出産・育児関連の制度
(1) 育児休業給付金
概要
育児休業中の所得を補償する給付金。
支給期間:原則として子どもが1歳になるまで。保育所入所不可の場合は最大2歳まで延長可能。
支給額
育休開始から6か月:賃金の67%。
7か月目以降:賃金の50%。
申請期限
育児休業開始日から1か月以内。延長の場合は再申請が必要。
(2) 出産後に育児休業を取得する際の注意点
勤務要件
育休開始前の2年間で11日以上働いた月が12か月以上必要。
証明書の準備
保育所入所不可の場合は自治体からの証明書を提出。
3.申請手続きと注意点
(1) 健康保険関連の申請
出産育児一時金や出産手当金の申請は、勤務先を通じて行います。必要書類には「出産手当金支給申請書」や医師の証明書が含まれます。
(2) 雇用保険関連の申請
育児休業給付金は、勤務先を通じてハローワークに申請します。育休中は原則2か月ごとに申請を行います。
4.ケース別に見る出産・育児制度の活用方法
以下では、ケースごとの出産手当金および育児休業給付金の具体的な計算過程を解説します。なお、ここでは一般的な例をご紹介しておりますので、個別に具体的な期間や金額を知りたい場合は管轄のハローワークや協会けんぽへお問合せください。
※前提:手当金や給付金の支給額計算は、標準報酬月額30万円を基準としています。
ケース1:産休をフル活用、1歳時点で保育園等に入所できず1歳6か月まで育休を延長
※出産予定日の42日前から産休を取得
出産手当金の計算
対象期間
産前:42日間
産後:56日間
合計:42日 + 56日 = 98日
支給額の計算
標準報酬日額:30万円 ÷ 30日 = 1万円
出産手当金:1万円 × 2/3 × 98日 = 約65.3万円
育児休業給付金の計算
支給額の内訳
最初の6か月間
標準報酬月額 × 67% × 6か月 = 30万円 × 0.67 × 6 = 約120.6万円
7か月目以降(約0歳9か月~1歳6か月までの10か月)
標準報酬月額 × 50% × 10か月 = 30万円 × 0.50 × 10 = 約150万円
合計支給額
120.6万円 + 150万円 = 約270.6万円
ケース2:配偶者も育休を取得し、パパママ育休プラスを活用して1歳2か月まで育休
※出産予定日の30日前から産休を取得
出産手当金の計算
対象期間
産前:30日間
産後:56日間
合計:30日 + 56日 = 86日
支給額の計算
標準報酬日額:30万円 ÷ 30日 = 1万円
出産手当金:1万円 × 2/3 × 86日 = 約57.3万円
育児休業給付金の計算
支給額の内訳
最初の6か月間(産後休業56日を経過後から開始)
標準報酬月額 × 67% × 6か月 = 30万円 × 0.67 × 6 = 約120.6万円
【以降、子が1歳に達する日まで配偶者が育休を取得】
育休再取得(2か月)
標準報酬月額 × 50% × 2か月 = 30万円 × 0.5 × 2 = 30万円
合計支給額
120.6万円 + 30万円 = 約150.6万円(配偶者分を除く)
ケース3:1歳6か月時点で保育園等に入所できず、2歳まで育休を延長
※出産予定日14日前から産休開始
出産手当金の計算
対象期間
産前:14日間
産後:56日間
合計:14日 + 56日 = 70日
支給額の計算
標準報酬日額:30万円 ÷ 30日 = 1万円
出産手当金:1万円 × 2/3 × 70日 = 約46.7万円
育児休業給付金の計算
支給額の内訳
最初の6か月間(産後休業56日を経過後から開始)
標準報酬月額 × 67% × 6か月 = 30万円 × 0.67 × 6 = 約120.6万円
7か月目以降(0歳9か月~2歳の約16か月間)
標準報酬月額 × 50% × 16か月 = 30万円 × 0.50 × 16 = 約240万円
合計支給額
120.6万円 + 240万円 = 約360.6万円
5.【令和7年4月改正】育休延長の厳格化
(1)改正ポイント
令和7年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります。
保育所へ入所させる意思がないにもかかわらず、休業や給付金受け取りの延長を目的として、あえて入所不可となるであろう施設のみを希望する、入所保留を希望する旨を申込書に記載するなどするケースが多々ありました。これは制度主旨に沿わない行為であるため、これまでの確認に加え、保育所等の利用申し込みが速やかな職場復帰のために行われたものであると認められることが必要になります。
(2)具体的な手続き
次の書類を延長時の「育児休業給付金支給申請書」に添付する必要があります。
・育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
・市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
・市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
(3)注意点
「市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し」について、以下に該当するか否かを厳しく確認されることになりました。該当すると判断された場合には延長が認められない可能性があります。
・合理的な理由なく自宅から通所に片道30分以上要する施設のみを希望している
・入所保留となることを希望する旨の意思表示をしている
5.まとめと相談窓口
出産・育児に関する制度は、健康保険や雇用保険でしっかりとサポートされています。ただし、ケースごとに給付額や申請手続きが異なるため、早めに計画を立てておきましょう。
ご相談はCATAPULT会計事務所へ
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