経営者として、どの事業に力を入れ、どの事業から撤退すべきかを判断することは、成長のための重要な決断です。しかし、その判断を感覚や短期的な視点だけに頼ると、長期的な利益を逃すリスクがあります。ここで力を発揮するのが「会計情報」です。正確で分析可能なデータは、経営判断における道標となり、リスクを最小限に抑えることができます。
今回は、会計を活用して「利益率の悪い事業からの撤退判断」を行う方法をご紹介します。
1. 利益率の見える化:事業ごとの採算をチェック
まず、事業単位での利益率を算出します。事業ごとの売上高と変動費、固定費を分けて考え、以下の計算式で利益率を求めます。
利益率 (%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
利益率が低い事業は、コスト構造や市場環境の影響を受けている可能性が高いです。ただし、ここで注意すべきは「固定費の配賦」です。適切な配賦ができていない場合、利益率が実態を反映しないことがあります。そのため、事業別損益計算書(P/L)を精緻に作成し、正しいデータに基づいた意思決定を行うことが重要です。
2. 未来予測を加味する:撤退判断に長期的視点を
利益率が悪い事業でも、将来的に成長が見込まれる場合は、簡単に撤退すべきではありません。特に、新規事業や投資段階の事業は短期的には利益率が低いことが一般的です。
そこで、会計の役割は「未来の収益性をシミュレーションする」ことです。例えば、以下の質問に答える形で、将来予測を立てます。
現在の市場環境が改善すれば収益は上がるか?
追加投資をすることで利益率を改善できるか?
撤退した場合、固定費が他の事業にどう影響するか?
未来予測を数値で明示することで、撤退や存続の判断をより精度の高いものにできます。
3. 撤退のコストを計算する
利益率が低い事業から撤退する際、撤退にかかるコストも忘れてはいけません。会計の視点では以下の要素を考慮します。
固定資産の売却損または除却損
解雇に伴う人件費(退職金など)
契約解除に伴う違約金やペナルティ
これらを踏まえた上で、「撤退後の収益性が上がるのか」を計算することが必要です。ここでの計算が曖昧になると、撤退した後に損失を抱え込むリスクがあります。
4. KPIを活用した継続的モニタリング
撤退を判断する前に、まずは改善の余地を見極めるためのKPI(重要業績指標)を設定し、継続的にモニタリングする方法もあります。例えば:
営業利益率(Operational Margin)
投下資本利益率(ROIC)
事業別のキャッシュフロー
これらのKPIを定期的に見直すことで、改善可能な事業を見極め、撤退を回避できる場合もあります。
5. 会計を使った経営改善の成功例
ある中小企業では、複数の地域に展開する店舗ごとに利益率を分析しました。その結果、一部の店舗が利益率を大きく下げていることが判明。特に固定費の配賦が適切でないことが分かり、正確なコスト計算を行ったところ、閉鎖対象となる店舗が明確化しました。
この企業では、撤退コストと将来的な収益改善効果を比較し、迅速な意思決定を行った結果、全体の利益率が大幅に改善。さらに、撤退によって浮いたリソースを成長中の事業に投資することで、事業全体の成長を促進しました。
会計が経営判断を支える力
利益率の悪い事業からの撤退判断は、感覚ではなく、データに基づいて行うことが重要です。会計の力を借りれば、現状の把握から未来予測、撤退コストの計算まで一貫した分析が可能になります。
もし、事業別の損益計算や撤退判断に悩んでいる場合は、ぜひご相談ください。初回無料の経営相談を通じて、具体的な解決策をご提案いたします!
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