top of page
執筆者の写真望月 史郎

高い報酬と権限を伴う責任:成果が出なければ解雇の現実とは


先日、PwCあらた監査法人時代の先輩と会計システム導入に関して話をしていた際、アメリカと日本の働き方や評価制度の違いについて非常に興味深い議論がありました。特に、アメリカで機能しているホワイトカラー・エグゼンプション制度が話題に上がりました。この制度は、労働時間ではなく成果に基づいて評価される働き方を推進し、成果を出さなければ解雇が促進される一方で、対象外の人は予想以上に雇用が保護されているという点が強調されました。アメリカではこの制度が一般的に浸透していますが、日本ではまだ十分に導入されていません。

では、なぜ日本ではこのような成果主義的な働き方が実現しないのでしょうか?その背景には、成果が伴わなくても解雇されない仕組みや、企業がリフレッシュして再スタートを切ることが難しい環境が深く関係していると考えられます。


アメリカで機能する『成果で評価される働き方』

アメリカでは、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を通じて、成果を出さなければ解雇という厳しい現実があります。この制度では、与えられた権限に応じた成果が厳しく求められ、従業員は与えられた職責を果たすことが義務付けられています。たとえば、システム導入時にはマスター情報の管理やデータインポートにおいて、ミスが解雇の理由となり得るという厳しい緊張感が常に存在します。また、制度の対象外である従業員の雇用は強く守られている点も特徴です。ホワイトカラー・エグゼンプションの適用基準は連邦や州によって異なりますが、年収5万ドル程度が目安とされています。


さらに、アメリカでは同業のマネージャー同士が良好な関係を築く傾向があります。なぜなら、解雇された場合に同じ業界内で再就職する可能性が高く、互いに牽制し合う関係が自然と形成されるためです。これにより、業界内での評判が重要視され、結果として責任感が強まることになります。


加えて、アメリカではリーダーシップの評価において、バーベキューを開催するといったカジュアルな活動が、リーダーシップの発揮として評価されることがあります。チームをまとめ、仲間意識を高めるためにリーダーが積極的に企画を行うことで、コミュニティの強化や業務へのモチベーション向上が評価される傾向があるのです。


日本における問題点

一方で、日本では近年、長時間労働を評価しないという風潮が広がり、成果が重視されるようになってきました。しかし、成果が出なくても解雇されないという現実が、企業の成長を阻害しているケースが多いと感じます。日本では、成果を上げられなかった従業員に対して、転勤や降格といった対応が取られ、解雇という選択肢がほとんど使われていないのです。

特に、高い報酬と強い権限を与えられているにもかかわらず、成果が出せない場合に解雇されないという状況が続くと、企業内での刷新やリフレッシュが非常に難しくなります。転勤や降格では根本的な問題解決にはならず、組織全体の改革のスピードが遅くなり、企業のパフォーマンスにも悪影響を与えます。


また、給与が上がり、権限が増す場合、その責任を果たさなければなりません。報酬は成果に見合うものであるべきであり、合意した成果を達成できなければ、解雇されることも必要だと考えます。企業にとっても、個人にとっても、報酬と権限に見合った責任を果たすことが重要です。

さらに、日本では適切な評価制度が整っていないことも問題です。評価の基準が曖昧であったり、評価する側の準備や能力が不足していたりする場合、適切なフィードバックや公正な評価が行われません。評価する側もエビデンスに基づいて評価できるかどうかを問われ、彼ら自身も適切に評価される仕組みが必要です。これが整わない限り、成果に基づく公正な評価が行われる環境は実現しません。


解雇されるという緊張感に対する考え方

一方で、解雇されるという緊張感が常に存在することが、必ずしも個人の能力を最大限に引き出すとは限りません。人は、安心感をもって職責を果たせる環境の方が、より高いパフォーマンスを発揮できることが多いのです。しかし、標準的な人間にとっては、自己変革を続けたり成果を出し続けることが難しいため、時にはこうした厳しい評価システムも有効かもしれません。

欧米的な投資家重視の資本主義的な考え方ではなく、自分のため、チームのため、そしてクライアントのために何が必要かを考え、それに応じて行動できる環境があるならば、解雇を恐れる必要のない職場環境の方が理想的です。個々の従業員が、安定した環境で最大の能力を発揮できるようにすることが、企業の成功にもつながるでしょう。


日本が学ぶべきポイント

日本でも成果主義を重視する制度を導入することは可能ですが、単に解雇規制を緩和するだけでは不十分です。プロフェッショナルとしての責任感を伴った評価制度の導入が不可欠です。また、成果を出せなかった場合に解雇を行わないと、企業が本当に変革を遂げることは難しいでしょう。企業がリフレッシュし、新たなスタートを切るためには、成果に対して厳しく評価される環境を整えることが必要です。さらに、評価する側もエビデンスを基に評価する能力が求められ、評価自体が適切に行われる仕組みを構築することが重要です。


結論

日本では、成果を重視する働き方へのシフトが進んでいるものの、成果を伴わない従業員が解雇されない仕組みが問題となっています。高い報酬や権限を与えられているにもかかわらず、結果を出せない従業員に対して適切な処遇が行われなければ、企業の変革や成長は難しいでしょう。アメリカで機能しているホワイトカラー・エグゼンプション制度のように、成果を重視し、責任を持って業務を遂行しなければ解雇されるという厳しさのなかにありながら、仕事に集中できる環境づくりが、今後の日本企業の成長に重要です。

閲覧数:5回0件のコメント

Comments


bottom of page